私と社交ダンス 第2話 社交ダンスは難しいですか?

山口慶子

私がダンス教師になりたての頃は、初等科、中等科、高等科と全て各科毎にフィガーが決まっており、皆が同じフィガーで踊っていました。
ダンス教室に入会すると、初心者の人には最初は前進、後退のウォークを教えます。
次にボックス(スクエア)、90度づつ回転する右回り、左回りのボックスを教え、
そのあとに始めてダンスの種目のブルース(現在はスロー・リズム・ダンスと言います)を教えます。

その後でモダン種目(現在はスタンダードと言います)ですと、
ワルツ、タンゴ、クイックのステップを教え、その後でスロー・フォクストロットを教えます。

ラテン種目(現在はラテン・アメリカン・ダンスと言います)ですと、
マンボ、スクェア ルンバ、ジルバを教え、
その後でキューバン・ルンバ、チャチャチャ、サンバ、パソ、ジャイヴを教えます。

社交ダンスを習う初心者が最初に苦労することは、足をチェンジする動作です。
普段歩く時皆さんは足を交互に動かしますよね?
ところがダンスを教えている時「足を閉じて、次に反対の足を動かして下さい」と言うと、大半の人は足のチェンジが中々出来ません。
閉じるという動作が普段、生活の中にはない動作なので、足を交互に動かすことが難しくなるのです。
同じ足を2度動かそうとする人が多く、足の裏に磁石でもついているのではないか?と思うようにびくとも動かない感じの人もいます。
しかし、少し続けていると段々スムーズに足のチェンジが出来るようになり、色々な種類のステップを踏むことが出来るようになります。
その頃になりますと、生徒さんも段々社交ダンスが楽しくなってきます。

次に、ダンスを教える上に大変難しい事は、ホールドとボディ・コンタクトです。
今では教えるのにそれほど苦労はしませんが、初心者にとってはまだ簡単ではありません。
私が上野ダンス教室(現在の北條ダンススクール)のプロになった頃、一般的には社交ダンスに対するイメージは余り良くなく、
現在のように高年齢のダンス・マニアが非常に多いという現象はとても考えられませんでした。
その頃は若いダンス・マニアの方が比較的多かったように思います。
上野ダンス(北條ダンス)は若い生徒さんが非常に多く、教室の雰囲気は明るく、賑やかで社交ダンス教室という言葉がピッタリでした。
しかし若い世代の生徒さんであっても、ホールドをし、ボディコンタクトをしようとすると腰を引いてしまい、
とてもスムーズにはボディコンタクトが出来ませんでした。
それは男女という意識が、相手が先生であっても強く、ダンスを踊るのを難しくしてしまったのだと私は思いました。
相手は先生ですよ、という意識に変える為、非常に厳しく教えていたように思います。