コングレス
須田雅美
2010/6/14
土日のイベントといえば、コングレス。世界のトップコーチやダンサーによるレクチャーが行われます。 私達もエスパン、ドニー、ステリアノスといった先生のレクチャーにモデルとして参加させて頂いたことがあります。(過去ログに記事があると思います。) 以前は土日にコンペはありませんでしたが、出場組数の増加に伴って予選の予選を行わなければならなくなったのと、アマチュアにもライジングスター選手権ができたので、コングレスはウィンターガーデンの中のスパニッシュホールで開催されます。 朝9時半ぐらいから夕方5時ぐらいまで、ティータイムやランチのブレークを入れながら、2日間で20コマぐらいのレクチャーを聴講することができます。
スパニッシュホール
今回は我らが師匠のドニー・バーンズとゲイナー・フェアウェザーが朝11時頃からレクチャーをするということで、場所取りのため早めに会場へ行くと、最初の講師だったロベルト・ヴィラのレクチャーがすでに始まっていました。 まだ人が少なめだったので、ドニーマニアの竹歳組、明マニアの夏見組と一緒に正面で見やすい場所を確保することができました。
見やすい場所を確保
2番目の講師は元イギリスチャンピオンのニコラ・ノーディンという女性でした。残念ですが、いわゆるただのガイジン。 現役時代の彼女は、私達にとっては魅力のかけらも無いイングリッシュスタイルのダンサーでした。 今回のレクチャーでモデルを務めたダンサーも全員が冴えない感じで「あ〜…この人に習っても、こんなダンサーにしかならないんだぁ」と寂し〜くなってしまいました。最近イギリスダンス界の宝とも言えるコーチ達がイギリス以外の国を拠点に教えるようになってしまい、若めの世代で国に残っているのは「ジャッジをするから生徒が来る」ってタイプの人がほとんど。イギリスのダンスが衰退するのも仕方が無いって証明してしまったようなレクチャーでした。
ティーブレークの後は、ラテンファイナリストのフランコ・フォーミカ。 インパクトというテーマに沿って、サンバを例に取り上げてリズムのとり方を講習しました。 残念だったのは、パートナーのオクサナが彼が説明しているように踊れていなかったこと。 フランコの体幹の強さや筋力は並じゃありませんから、弱い彼女は、彼が使っている場所とは別の場所を代用して、彼と同じように音楽を表現しているように見せかけるしかありません。今後の彼女の成長に期待しよう。
ティーブレーク中
その次に登場したのは、海外流出組のアンドリュー・シンキンソン。 現役時代後半は寂しくなった毛髪を何とか盛り上げてセットしていましたが、潔く剃ってしまってからはきれいな卵型の頭部丸出しで男っぽさが増しました。 彼は正統派のイングリッシュスタイル。ジョン・ウッド、マーカス・ヒルトンとともに、イギリス最後の黄金時代を盛り上げていました。 北條先生と仲が良かったので、私達は彼に相当お世話になりました。 だからという訳ではなく、彼の音楽性豊かでベーシックに忠実なダンスが今でも一番好きです。 パートナーのいない彼は、ドイツ人のナターシャ・カラベイを使って、「アンドリューの流儀、コンペでの必要事項5か条と禁止事項5か条」を、5種目のデモンストレーションを交えてレクチャーしてくれました。
アンドリュー・シンキンソン
さていよいよお待ちかね、お師匠様の登場です。 久々に「ドニーッ!!」と大声でコールしましたよ…明先生がです。 テーマは「ザ・パーフェクト・マッチ」一旦カップルを解消して違うパートナーと踊るという経験をして、再び元のさやに納まった彼らには、正にパーフェクトマッチなテーマでした。 彼のレクチャーパターンはベシャリ5分の3、レクチャー5分の1、デモンストレーション5分の1という時間配分で、デモの最後には泣くんです。
師匠ドニー・バーンズとゲイナー・フェアウェザー
さて、今回ベシャリの部分では、自分達のダンスが、色々なコーチ達に支えられて現在に至っているということを、首にかけているネックレスのチェーンに例えていました。 レクチャーの部分では、どのステップも一歩一歩の間の部分がとても大切なのだと力説しました。私達はレッスンで、ダンスでも何でも「in between」が重要だということを、耳にタコができ、体には(ドニーに叩かれて)アザができるほど教え込まれてきましたから、「うんうん、その通り。考え方は変わってないな。」と再確認しながら聞きました。 お待ちかねのデモンストレーションタイムでは、いつも弟子として緊張します。彼らの良い時も悪い時も知っているので、「今日の師匠が良く踊れますように…」と、祈るような気持ちです。でもそんな心配は無用で、フロアに一人で立つゲイナーのスタイル良さとカリスマは相変わらず。手を上げただけで宇宙と交信しているかのように見えました。
ティンキーちゃん宇宙と交信中
そこに登場するのは、まったくダラシない服装で若作りした、ピーターパン・シンドロームのドニーおじさん。
若作りのドニーおじさん
ところがゲイナーの手をとった途端に、ラテンチャンピオンがむくむくっと甦りました。 完璧なスタンディングポジションで立ち、オープンヒップツイストを踊ったところで、なぜだか私、涙がド〜ッと溢れてきてしまいました。 次はいつ見られるか分からないお師匠様のダンスをこの目に焼き付けたいのに、涙でかすんで見えないじゃん(TT)うっ、コレ書いてる今もまた涙がっ… いやぁ、マジで感動したっ!終わった後にドニーのところに行くと、ドニーファミリーは全員号泣…特にヴィベッケ・トフトなんて目が真っ赤なウサギちゃんでした。
完璧なスタンディングポジション
その後、同じ釜の飯を食って育ったネギちゃん達と一緒にランチ。自称「ドニーイズムの継承者」達としてドニー&ゲイナーに乾杯しました。流した涙の分を水分補給しなきゃ。
師匠に乾杯
同じ釜のピザを食う
涙の分を水分補給
同じ釜のピザを食いながら4人全員で一致した言葉は「ちゃんとやんなきゃダメだね」でした。 アンドリューやドニーのようにベーシックを本当に大切にして教えるコーチのレッスンを受けることはお金を支払えば誰でも可能です。 でも、そのコーチに「この子達に大切なことを教え込みたい」と思わせるほど食らいついて行くことで、支払うレッスン代以上の価値あるものを得ることができると思います。
ちゃんとやろう、ベーシック
ネギちゃんの言葉が面白かった…「みんなイギリスへ来て、アンドリューみたいにカビが生えたようなダンスに触れなきゃダメだよ。」 チーズ好きのネギちゃんならではの例えでした。(続く…)
カビが生えて高級な…。