スーパースターに学ぶ

須田雅美

2010/2/15

先日、明先生とホイットニー・ヒューストンのコンサート「Nothing But Love Japan Tour」に行きました。 私達の、いわゆる青春時代にヒットチャートを賑わしていた歌姫。 今年デビュー25周年を迎え、13年ぶりに来日したそうです。 若い頃、人気シンガーだったボビー・ブラウンと結婚、家庭内暴力、薬物中毒、離婚、リハビリと、アメリカのスターにはわりとありがちな人生を歩んでいましたが、昨年8月に最新アルバムでビルボード200のチャート1位を獲得し、復活を果たしたのです。コンサートに行ったら、ノらなきゃ損!ノれなきゃ損!彼女にはヒット曲がたくさんありますよね。 何本か出演した映画の主題歌や挿入歌を歌って、それも大ヒットしたし。

ニューアルバム I Look To You

私達、実はものすごいファンというワケでは無く、知っているのはヒット曲のみ。でも、コンサートではニューアルバムの中の歌も絶対歌うから、歌いそうな曲を聞き込んでビデオも観て…すごい予習っぷりです。 まるで試験前の学生さんみたい。 今回の席はVIP指定席☆先行予約開始当日に購入した約25,000円(手数料込み)もする席でしたが、アリーナ席の前方真ん中で世界の大スターが…本物が動いて歌うのを見られるんですから!お土産付きで得した気分。 フリースのひざ掛け、ネックストラップ付きカードホルダー、ポーチが、特製のビニル製のバッグに入っていました。

お土産付きでした

興味ある海外アーティストが来日すると、できる限り見に行くようにしています。 舞台の設営、照明やその他の効果、時間の使い方など、ダンスのイベントやパーティーの参考にできることが見つけられるので、とても勉強になります。ただそれだけではありません。 目の前に出てくるのは世界的な☆スーパースター☆!彼らの、観客とのコミュニケーションの取り方が気になるのは当然。 でも実は、コンサートの間に起こるハプニングに際して、彼らがどんなアクションを起こすのか、スタッフがどう動くのか?っていうのも見逃せない楽しみなのです。 氷雨が降るとても寒い日だったので、観客達は震えながら会場に到着しました。場内は当然暖房が効いているので、コートを脱いだって寒いわけではありません。でも私は、エアコンの風が常にスースーと吹き降ろしていることが少し気になりました。 貫禄がついて歌姫と呼ぶのがはばかられる感のあるホイットニーは、銀色にビッカビカに輝くタンクドレスに、マラボーで覆いつくされたロングコートを羽織って登場。 最初2曲は「あれ?CDと同じだよね?」多分クチパクだったんですね。でも、口ずさみながらではあったし、動き回ってるから汗だくな彼女が大きなスクリーンに映っていた。 でも、着替えの時間までコートを脱ぎかけたのはたったの一回だけ。途中、「寒いよねぇ…」と観客に向かってつぶやいていた。着替えを終えて戻ってきた彼女もコート姿。 でも、しきりに喉元をコートでカバーしようとしていたし、「エアコン切ってよ…私、エアコンの効いた所で歌うのキライよ。」と独り言のように言いました。 それを聞いてますます私もエアコンが気になってしまいました。中盤で自分の過去のヒットソングを語るように歌っている最中も少し声がかすれかけたりしていましたが、それが彼女のようなシンガーの持ち味にもなるので気にはなりませんでした。 ダンサブルなナンバーが続き、「宴もたけなわという頃に一番のヒットソングを歌うのが普通…」と明先生が言った通り、映画ボディーガードの主題歌「I Will Always Love You」キターーーーッ!この曲は、なんつっても静寂からいきなり高音を彼女の突き抜けるような声で♪エンダァ〜〜イア〜〜ィ オールウェィズ ラヴュ〜♪と歌う部分が、彼女の名刺代わりになるぐらいに有名。 だから全ての観客が「あの歌声のシャワーを浴びたい!」と思っていたはずです。 その前から調子が悪そうだった彼女…ある意味実力を出し切れない状態で、名曲をファンの前で歌わなければならない…どんな心境だったかは、シロートの私達が知る由もありませんが、彼女も普通のhuman being(人間)だと考えたら、とてもとても気の毒でした。

そんな状態でももちろん歌ってくれました…普通よりもオクターブ下げたり、短く歌い切ったりして。 でも途中、マイクから顔を遠ざけて咳払いをしたり、だんだん苦しそうになっていったのです。そしていよいよ例のサビに…音楽は一瞬の休止符、静寂の中を観客は息を飲んでシャワーを待つ。 そして私達が浴びたシャワーは…少し目が詰まったシャワーヘッドから無理矢理に水圧を上げて出したような感じではありましたが、だからこそ、この日にしか浴びられないシャワーを浴びたというライブ感が嬉しかった!! 実は曲の最後の「もうワンフレーズ」というところで、奥のスタッフを呼んで「ムリ!」みたいなことを言っているように見えたので、「え?やめちゃうの?ねぇ、歌わないの?」と思ったけど、水を飲んで喉を整え美しい声で聞かせてくれました。 「最後はキレイに終える。」っていうアイデアは自分がプロであるという意識の高さをも見せてくれたと思いました。

歌うホイットニー

「ホイットニー・ヒューストンという人間はこの世に1人しかいない」というプライドは、自分の代わりは居ないんだ=穴を開けられないんだという恐怖心との背中合わせです。 自分がどんな状態であろうとも、自分のファンにはその全てを見せることを選択する彼女の強さに脱帽しました。ホイットニーの歌唱力のルーツは母親が元スウィート・インスピレーションズのシシー・ヒューストン、叔母の1人はディオンヌ・ワーウィックであるなど、R&BやソウルミュージックのDNAを受け継いでいるというだけではありません。 子供の頃から教会で神様に感謝を捧げる歌、ゴスペルを歌っていたことも大いに関係があるようです。 今回のアルバムに収められていて、コンサートでも歌った「I Look To You」は、完全なゴスペル。常に見守ってくれている神様にむけての気持ちを歌っています。 聞き流さず、歌詞をちゃんと理解しようと聞いていると涙が出そうになるんです。彼女の「ダメ時代」を想像しながら聞いたら余計に感動します。 アンコールのアップテンポな「Million Dollar Bill」を歌い終え、舞台に片膝をついて手を組んで祈るしぐさは、演出ではない彼女の自然な行為…歌、観客、スタッフ、そして神様に感謝をしている姿だと感じました。 彼女が自分の為、そして観客の為にふりしぼった声は、絶対に神様に届いていると思いました。 こんなに素敵な歌を聞かせてもらった上、ピンチの対処法も学べてしまったコンサート。本当に出かけて良かった! ホイットニーがコンサートの初めに「私のハートを持ち帰って欲しい」と言いましたが、それ以上のものを分けてもらった気がします。私も神様に感謝です。

興味のある方はホイットニーの公式ウェブサイトで韓国公演の様子がアップされていたのでご覧下さい。 http://www.youtube.com/watch?v=puW2f0cVYSE&feature=player_embedded

そして、コンサートで歌われたニューアルバムの中の曲のプロモーションビデオはこちらです。 I Look To You http://www.whitneyhouston.com/us/media/videos/8114/music-videos Million Dollar Bill  http://www.whitneyhouston.com/us/media/videos/10180/music-videos