秋のロンドン

須田雅美

2009/10/23

今年もロンドンインターの観戦に出掛けました。

時差ぼけを直してから観戦したいので、一週間前に渡英し、あわよくばドニーのレッスンを…と計画をたてての出発です。

ドニー大先生は9月はじめに膝の内視鏡手術を受けたばかり。
南アフリカで会った時に手術跡を見せてもらったり、痛そうに頑張ってリハビリを続ける様子を見たら「レッスンしてくれ」とは頼めませんでした。一応、雑談している時に「明がレッスンの予約を取ってこいって言ってる。」とカマをかけたら、「みんなそうなんだよ!『ドニー、膝の調子はどう?』って聞いた後、ふたこと目には『ところで、いつレッスンしてもらえる?』って聞くんだよ。」と笑っていましたけどね。
明先生はレッスンを受ける気まんまんで「オレはダンスシューズと練習着は入れていくよ。」というので、ダンスシューズはロンドンに置いてあるよ…と思ったけど、自分も練習道具一式をスーツケースに入れて行きました。

ロンドンに到着してレンタカーを借り、途中でお夕飯を済ませてからでバーンズ邸に到着。ドニーの高級SUV車が無かったので、お出かけかな?と思ったら「ハロー」と挨拶に来てくれた。明先生が車から荷物を降ろしている間に膝の状態を聞くと、随分良さそうで、「今日もレッスンしてきたんだ」なんて言うから、私の目がキラ〜ンと光ってしまったんだと思う…「レッスンして欲しいのか?」と言われて「NO」と言うハズが無いでしょ。ちょうど明先生が最後の荷 物を運び終わって家に入ってきたところだったので「レッスンしてくれるって!」「やった!」と喜び合いました。「世の中がアニメみたいに見える」というドニーの目には、黄色い肌をした小さなヘンゼルとグレーテルが、目をキラッキラに光らせて、キャンディーがもらえるのを待っているように見えたことでしょう。

とりあえずレッスンはゲット!!今回の渡英の目的の3分の1は果たしたようなものでした。

引退をしてはや8年…毎日のように朝から夜中まで他人のダンスに触れている事が、なんとなく自分のダンスに対する欲求を麻痺させているような気がする事があるんです。自らレッスンを受けるという事と、外国の競技会を観戦するという事を義務のようにする事で、ダンスと向き合う時間を持つ事ができ、大切に守られていく物と新しい流れの両方を追及する意欲をかき立てられます。私はこうして元SA級の元全日本チャンピオンとして存在し、教えていく自信を保っていると思う。お金も時間もアタマもいっぱい使う。こんな事しなくたって他人に教えたりジャッジを務める事は可能みたいだけど、今の私達には無理。

まずはインペリアル選手権を観戦に。主催のマイケル&ローナ・ステリアノス夫妻は、他人よりチョット頭がイイ。組織が競技会を運営する日本とは違い、個人が競技会を開催できるので、今回もUK10ダンス選手権を土曜日に開催し、ジュニアやユース、シニアを含めて2日間でがっぽり儲けた事でしょう。

この競技会にはセミファイナル常連組やライジングスターでのファイナル入りを狙うカップルが多く出場します。日本人は、スタンダードで庄司組が6位入賞、河原組がセミファイナル。笹谷組も頑張っていましたよ。一緒に観戦していたネギちゃんが「笹谷先生上手くなったよね、ボディーもバンとしてるし。久美先生もピターっとくっついてて、前よりもガタツキが見えない。」と褒めていました。今年の世界選手権第2位のヴィクターが出場していましたが、なんだかアナが以前よりもネックを返して頭を振りすぎるので、ミー(ムーミンのお友達ね)みたいな髪型も手伝って、シルエットの美しさが壊れていまっていました。2人とも以前よりソフトにふにゃふにゃと動いていたので、ネギちゃんもおきょうちゃんも「彼らの良さが消えた」と話していました。

ラテンではチャンピオンの中村・青柳組が最終予選でまさかの敗退、瀬底組・西島組の2組がセミファイナルまで進出しました。リッカルドが出場していましたが、その対抗馬となるべく選手は誰もいなかったのでeasy winnersとなりました。シャーリーがピッタリとセコンドにくっついていたのは言うまでもありません。その他、中国のダニーとヴィヴィアンも良い踊りをしてましたが、残念な成績でした。

アマチュアではニーノくん(アニエロ・ランガラ)が新しいパートナーと出場していましたが、う〜ん、前の女の子とちょっと顔が似てるな。足とかはむっちりして使えそうだけど…という印象でした。あ、ニーノの前のパートナーは、たまに出てきては成績を出すジェイ・パークっていう、韓国の選手と組むんだそうです。理由は、彼がお金持ちだからだってさ。

ドニーのレッスンがあったのでブレントウッドでの予選は観戦に行けませんでしたが、海外で日本人ダンサーを応援していると、特にラテンの部では技術も個性もさほど突出したダンサーがいないのが現状で、その時の運によって成績が変わりやすいような気がします。しかし、中村・青柳組はすでに良い成績をあげた経験もあり、日本代表選手であるという事を知らないジャッジは少ないはずです。他の選手と比べてかなりのアドバンテージを持っているにもかかわらず、今回のような芳しくない成績だったのは、明らかに彼らのダンスや考え方に原因があると分析します。私は同じ技術団体に所属をし、同じ時代に競い合い、とてもナイスな人柄なので応援をしていますが、教えているわけではないのでアドバイスをしてあげる事はできません。でも多くの関係者は今年SA級となった彼らが、然るべき方から然るべきアドバイスを受けてくれる事を願っています。