2009年 春の渡英旅行記4

須田雅美

2009/7/11

「2009年春の渡英旅行記 #4 そろそろダンサーの話」

ブラックプールのダンサーの話や結果は、いろんな人がブログなんかに載っけてるだろうから、 私は書かなくてもいいかな…と思ったけど、ま、ちょっと書きますか。記憶が薄れてるからちょうどいいかも。

海外の競技会では、日本のファイナリストが決勝に何組食い込めるか、また、日本ではなかなか成績が伸びな いけど上手いと思われる選手がどこまで残れるか…ということが話題になります。日本にいて競技会の結果だけ を聞くと「日本からたくさんのダンサーが出かけてるけど、ぜんぜん活躍できなくて情けないね。」っていう人 がいたり、「今の選手達は根性や忍耐が足りないからダメなんだ。」っていう先輩方もいる。もちろん、その通 り!数打ちゃ当たるってもんではないし、参加することに意義がある…って、成績は二の次で自分の経験値を上 げるためだけに出場している選手もいます。でもね、真剣に成績を取ることと向き合って、頑張ってる人もいる んですよ。だから全ての日本人をひとくくりにしないで欲しいんですよね。

でも残念ながら、ほとんどの海外ジャッジは日本人をひとくくりに考えてるみたい。前号に書いた「差別」に 近い話で、「日本人=体が硬くて音感が悪く、ダンスの才能が無い…ゆえに下手クソ」と決めつけている人が多 いんです。ジャッジをする時には一組につきほんの数秒しか割り当てられないから、踊っている選手を見た瞬間 にマルバツを決める感じかな。だから、顔が知れ渡っている選手はある程度有利だと考えても良いでしょう。っ てことは、日本人は断然不利なんです。だってほとんどのプロはアマチュア時代の若い頃からヨーロッパ各国の 試合に出場してますからね。そんなライバル達と対等に渡り合うためには、まずメインの先生を決めて、なるべ く長期間留学すること。そして小さな競技会に出場すること。偽り無く社交的に振舞うこと。語学の勉強もして ジョークに笑えるようにすること。成功するにはとても時間が掛かります。でも、一生懸命頑張る人にはどんど ん味方が増えます。もちろん成功してくると敵もできますが、それは勝負の世界ですから仕方が無いでしょう。

話がそれてしまいました。今回、瀬底組、立石組、織田組、瀬古組は日本人ラテン選手の中でも自信を持って 踊っているように見えました。が、セミファイナルに手の届く選手はいませんでした。チャンピオンが引退をし てトップと位置づけされる中村(俊)組はシード選手として出てきたにもかかわらず、スパッと落とされてしま いました。彼らにとっては悪夢のような出来事だったと思います。私なら、貧血で目の前が真っ暗になり、悔し さと恥かしさでその場から逃げ帰ったことでしょう。そんな選手がいれば逆に成績の出た選手もいました。ライ ジングで良い成績を取れなかった松本組がルンバだけベスト24に進出…。比較する選手が違えば違って見えるし 、勝負は水モノだなぁとあらためて思いました。

世界のトップの調子を見るにはまず土曜日のチームマッチで比較します。4カ国しか出ていないので全てのファ イナリストを観れるわけではありませんが、選手達にとっては世界中のジャッジ達が自分達のダンスを見ているの で、手を抜けるはずがありません。だから観客は期待をして観るのです。現在、世界の勢力図を見ると、アメリカ がダントツで強い。チームマッチにもアルナス・ビソーカス、ヴィクター・フォン、リッカルド・コッキ、ユージ ン・カツェフマン世界のファイナリストとして活躍する面々が並びます。イタリアはゴッゾーリ、ソアレ、ドイツ はカラベイ、フォーミカとファイナリストが2人は入っています。ところが、ご本家のイギリスはスタンダードの ジョナサン・ウィルキンス選手しかファイナリストがいない…ついにこんな時代がキタ…栄枯盛衰ですね。でも、 アメリカのダンサーのほとんどがアメリカ生まれではないのも現状です。イタリア人丸出しのリッカルドがアメリカ の国歌斉唱で左胸に手を当てちゃったりすると、なんだか冗談みたいに見えるのは私だけじゃないと思う。でもね、 引退するとアメリカに行ってしまうコーチも多いんです。そのうちパニック映画のように、ダンス界もアメリカが 全世界を救ってくれることを祈りましょう。

今回は都合で水曜日のプロラテンまでしか観戦できませんでしたが、ラテンの印象だけ書くとすれば、アマチュア は人材不足。プロは一時期よりもまともに踊っているダンサーが増えた。世界的な不景気のせいもあって、成績を重 視していないダンサーが渡英を控えたせいかな?観ていて嫌な気分にならずに済みました。今回の私達のお気に入り ダンサーは女性がアナ・メルニコヴァちゃん、男性がジャスティナス君でした。アナちゃんは若くて美しくてセクシ ーで…数年に1人っていえるぐらいの女性ダンサー。これからスラヴィックと踊るので楽しみです。ジャスティナス君 は若くて個性的だけど、ベーシックテクニックもしっかりとしているので、今後プロラテンでファイナリストとして 活躍してくれると期待しています。