こころを込めて

須田雅美

2009/4/10

心/こころ:漢字の「心」は人間の臓器の心臓に形にからできた象形文字だそうですが…考えたら怖い。 だって解剖をしなきゃこの「臓器」がこの形って分からないじゃないですか。 まぁ、解剖学的に似ているといえばそうだけどさ。それに対して、 平仮名の「こころ」はさまざまな説があるみたい。 抽象的で 、話の流れによってはいろんな意味を持ちますよね。 人間の全ての行動は脳が指令を出すけれど、そんな研究がされていない頃には、 人間の全ての情動は心臓のある胸の奥にある「こころ」によって起こされると思われていたんですね。 それ、すっごく良く分かる!だって脳の働きを知るまでは、楽しい時や嬉しい時には胸がワクワクし、 緊張すると胸がドキドキし、悲しい時にはチクチクとかキューッとか感じたもん。 そう感じるのは脳の働きによって心拍数が変ったり、 体温に変化が起きたりするせいだと分かった今でも、 やっぱりワクワクドキドキチクチクキューッって感覚になるから不思議です。  私達は幕開けすぐに踊り出す為、緞帳が下りた状態でセンターにスタンバイします。 すると私の目線には「心」という字がデカデカと…。 見ているとなんだかぎゅうって押されるような、でも吸い込まれそうな、そして体が熱くなるんです。 場当たり稽古の初日、これは何のメッセージだろう?と見つめて考えました。

<演技に大切なもの>

お芝居をする役者さん達は、そのストーリーやそれに登場する人物を演じる為に、 言葉や言葉以外のノイズ、しぐさや表情などで表現しなくてはなりません。 その人物がどんな境遇で生まれ育ち、何を考えて生きているか、 何の為に存在するのかを考察し、 まさにその人物にならなければ他人にはストーリーが伝わらないのではないでしょうか? 井田さんのご指導の中にはよく、「情緒」や「情感」という言葉が出てきます。 専門的なテクニックは分からないけど、 心理的状態を雰囲気も含めて作り上げる事がお芝居には大切だという事なんじゃないかなぁ。 私はダンサーだけど、目の前にバーンとに見える「心」という文字に圧倒される事なく、 「こころを込めて踊りなさい」という 、劇場に棲む神様からのメッセージとして受けとめて踊っています。
…本当は「火の用心」という注意書きの一番下の文字なんですけどね(^^ゞ

<緞帳の裏側>