世界ラテンアメリカンショーダンス選手権 ファイナル
須田雅美
ジャッジが全員席に着いて、いよいよファイナルの開始です☆
#6 Justas Kuniskas & Ekaterina Romankove(リトアニア)
このカップルがファイナルに進出したのは、彼らがラテンダンスが上手いかどうかは問題ではありませんでした。
1)女性の特性である体の柔軟性を活かした振付けであったこと
2)女性がリフト慣れしており、なおかつ男性に安定感があるのでリフトから着地までが非常にスムーズでスピード感があること
3)女性の脚が長いだけでなく、美しく開脚したり上げたりすることができ、ダンサーとしての素質が高いこと
4)使用した音楽をKlazz Brothers&Cuba ParcussionのMorzart Meets Cubaより選択しており、ハッキリとしたラテンパーカッションの演奏がバレエのようになりがちなダンスにも関わらずラテンダンスらしさを助けたこと
以上が、彼らがファイナルに勝ち残った要因です。
#23金光進陪 & 吉田奈津子(日本)
前の組が終わって明先生と話をしていると、隣に座っていたスティーブさんが「ねぇ、日本人の子が残ってるみたいだよ。」と教えてくれました。選手入場口を見ると、金光・吉田組がスタンバっているじゃありませんか!「やった!良くやった(≧▽≦)」と、自分のことのように喜んでしまいました。入場する2人を後ろから見て「お前さん、頑張るんだよ…」火打石でカチカチ☆って、出かける主人の無事を祈る時代劇に出てくる女房の気分。
スーパージャパン、統一ショーダンス選手権、デモンストレーション、そして今回の世界選手権での予選、セミファイナル…と何度も見てきて彼らの振付けの流れを覚えてしまった私…彼らがファイナルを踊っている間ずっと、両手をギューッと握って、祈るような気持ちで彼らの動きと合わせて自分の身体を揺らしていました。めっちゃ身体に力が入って、終わった時にはぐったり(+o+)
この作品は激しいエネルギーの放出を見せなければならないので、上半身を揺らす時に腕を振り回してしまいがち。するとセンターを失ってバランスが取れなくなります。もがけばもがくほど…蟻地獄ではないけど、どんどん疲労がたまっていくのです。奈津子ちゃんは自分の持てる力を出し尽くそうと、いつもよりも動きが大きくなってしまったのでしょう…後半で脚の動きが悪くなり、最後の小さなリフトが「!?」となってしまいました。でも、ラテンダンスをベースに感情の激しさを表現しているということが審査員にも観客にも良く伝わったと思います。2人ともこの世界の大舞台で堂々と演技しきったね\(^◇^)/同じ日本人として誇りに思いました。お疲れ様!
#15 Andrey & Natalie Paramonov(アメリカ)
大柄で彼女の口が大きいこともあって表現がとても大胆に見えるけど、ファイナルでは音楽が甘くなってしまったので重く見えてしまいました。
予選とファイナルがあるショーダンス選手権では、一発勝負ではなく何度も同じ作品を踊るので高い集中力が必要です。5種目競技のように基準となるリズムに自分達の個性として音楽表現を付け加えていくわけではなく、特別に選曲した音楽になぞらえて振付けがしてあるので、毎回音楽と動きがビチッと合っていなければいけません。
それにしても、ジャケットさん(アンドレイ)って体幹がめちゃめちゃ強い!私、彼のことゲイだと思ってたんだけど、ヤツは屈強な男だったわ…あ、名前を見ると夫婦だ( ̄▽ ̄)
#14 Maxim KoKozhevnikov & Anastasia Grigoreva(アメリカ)
出てくるといきなりスゴイ応援!観客に人気がありました。フロアに入場してから、彼がシーッっというジェスチャーをしなければならないほどだったのですよ。
ベートーベンのピアノソナタ「月光」のように右手で高音部を強いタッチで弾き、左手は3連符でメロディーを助けながら徐々に音階を上げて盛り上がっていくピアノ曲で、これが男女の関係が親密になっていく過程として振付けられています。曲の展開部では1つの音を2回ずつ弾くデタシェという技術を使っているのですが、コレに細かい手の動きやステップを当てはめて、心が激しく動いている様子がとてもよく表現されていたと思います。踊っていた彼女も途中から感情が昂ぶって涙があふれてしまうほどの迫真の演技!2人が退場してから歓声が鳴り止まず、2人とも手応えを感じていたはずです。
マックスの表情が時折気味が悪かったことと、技術がイマイチだったことを差し引いても優勝させてあげたいと思いました。誰が振付けたのかな?すっごく興味がある!聞いてみよ〜っと(^○^)
#7 Justinas Duknauskas & Anna Melnikova(リトアニア)
マックス達の素晴らしい演技の後に沸き起こった観客の歓声は、否が応にもフロア袖で控えていたジャスティンとアナの耳に入っていたと思います…さすがのアナちゃんもドキドキしたことでしょう。踊りだした彼女は体に力が入り、踊り急いでいるようでした。しかし、ジャスティンが少し乱暴に彼女を投げ出してしまっても、なんとか気合いで止まったのはホントの意味で「さすが」です。
それにしても、25秒近くも女性1人で踊り、男性は床に転がって悶えまくるなんて、美しいこのジャスティンとアナのカップルだからこそ成立する振付けだわぁ(*´ω`*)ポッ
#12 Arsen Agamalyan & Oksana Vasilieva(ロシア)
選手入場口からリフトで登場したのは今回彼らだけでした。すでに最初から死神とか悪魔のような役柄の彼女が優位に立っている…ということを表現しています。人生の敗者っぽく、破れた風合いを出した彼の衣装は、勝ち進むにつれてさらにボロボロになってきちゃった。でも、その方がリアルさって伝わりますね。彼らのダンステクニックはハッキリ言って5種目競技だったら1次予選で落ちてしまうぐらい。しかし、開催地の「ロシア」で「ロシア人」が、人生の厳しさを「ロシア語」で歌った「ロシアを代表する歌手」ヴィソツキーの歌に合わせて踊ったことは、観客の絶大なる応援を呼び、彼らが自信を持って踊ることの後押しをしたと思います。
私はこれを春にも見ていましたが、その時よりも良く見えるのは、彼女のドレスや髪型、メイク…といったイメージを強く打ち出す部分を変化させたからだと思います。そして今回初めて見た人にはとても強いインパクトを与えたことでしょう。プログラムに掲載された衣装のままだったら、ファイナルに勝ち進むことはなかったかもしれません。同じ作品のはずなのにもっともっと良く見える…ショーダンスでは衣装だけじゃなく、トータルのイメージって大切だなぁ…と勉強になりました。
全ての競技が終了し、得点を集計する間に地元のアマチュアのラテンデモンストレーション…で、ハプニング!男の子のパンツが破れちゃった(汗)リフトの解除で女の子のヒールがパンツに引っ掛かっちゃったのね(^_^;)…隣の明先生は「なんだこの茶番は(-_-メ)」とお怒りでした。
茶番が終わり、いよいよ表彰式。それにしてもこの表彰台デカッ!3位の台に上がるのだって高くて踏み台が必要だわ(@_@;)
そしてファイナリスト6組がフロアに登場…金光・吉田組のこの笑顔をご覧ください。何か書くだけ野暮ですね☆
結果はもう皆さんご存知かと思いますが、
優勝したのはリトアニアのJustinas Duknauskas & Anna Melnikovaでした。
2位Maxim KoKozhevnikov & Anastasia Grigoreva(アメリカ)非常に惜しかった!
3位Arsen Agamalyan & Oksana Vasilieva(ロシア)ラッキー☆
4位Andrey & Natalie Paramonov(アメリカ)惜しいっ!
5位Justas Kuniskas & Ekaterina Romankove(リトアニア)とにかくキレイでした
6位 金光進陪 & 吉田奈津子(日本)この順位は悔しいけど、世界のファイナリストだ!
…どうでしょう?必ずしも5種目ダンスの結果とイコールにはならないのだ…と分かりますね。
ジャスティンが優勝した理由は、彼らの持つ個性「見目麗しい男女であるという事実」と、作品の音楽と振付けが持つ「ラテンダンスらしさ」によるものでしょう。
では、マックスが優勝するために足りなかったものとは?ショーダンスでは2組が同時に1つのフロアで踊ることは無いので、身長などのルックスは関係がないとすると…ラテンダンスの基本的なテクニックが不足していたのだと思います。
3位になったアルセン&オクサナは、ロシア人ダンサーの幅広さを物語るような存在でした。ショーダンスで見せることが可能な演劇的一面に重点を置き、文字通り演じきったことで見る側にメッセージがクリアに伝わりました。
金光・吉田組がもっと上位に食い込むことだって十分可能だったと思います。ただ、今回のライバル達は手強かった(>_<)1つ上の5位になるんだって大変!あの鉛筆削りで尖らせたようなつま先と新体操選手のような柔軟性の持ち主に勝つには、(プロポーションは変えられないとして、)まず第一にリフトの精度を上げなければなりません。そして、エスパンの振付けはコネクションが少し変わっているので、ステップをいかに大胆かつスムーズに変化させていくかがカギです。彼らは来年のショーダンス選手権にも出場が決まっています。頑張って欲しいな☆
お土産にもらったタタールスタンの帽子をかぶった北條章宏先生、長時間の審査、本当にお疲れ様でした。
ホテルに戻ってフェアウェルパーティーで~す(^^♪