韓国最新ダンス事情
北條章宏
韓国のプロ・ラテンダンス現チャンピオン 李 満浩(リー・マンホー)氏から「2月に自分のスクールの開設10周年記念パーティーと競技会を開催するので、ぜひソウルへ来て欲しい」という依頼の電話がありました。(彼は、15年前から私のレッスンを受けるために1年に数回、来日にしています。)そこで、今年の1月29日から4日間にわたり、4年ぶりにソウルへ行って来ました。久しぶりに訪れたソウルの最新ダンス事情を中心にレポートしたいと思います。
<1月29日(土)>
10:00成田発JL951便。12:30ソウルに無事到着。 入国手続を終え、荷物を持ってゲートを出ると李さんのいつもの笑顔がありました。一通りの挨拶をすませ、駐車場へ行くために外へ出たとたん・・・・・ 余りの寒さに驚きました!!李さん曰く、「ここ数日は、上空に−36℃の寒気団が居座っているので、最高気温も−12℃位にしかならないんですよ・・」との事でした。 4年前に比べると、高速道路もすっかり整備されていて、交通渋滞が随分と緩和されていました。ソウル市街を二分する母なる川・漢江(ハンガン)の川面も厳しい寒さのためにすっかり凍ってしまっていました。そんな光景を眺めながら、今回の宿泊先であるロッテホテルへ向かいました。
今回宿泊するロッテホテルは、第一級の設備を持つ韓国で最高級のホテルのひとつです。
玄関正面には、最高級であることを表す5つのムクゲ(韓国の国花)のマークのプレートがありました。
そして、便利なことにロッテデパートと同じ棟でつながっているのです。チェックインの後、今日のスケジュールを確認したところ、嬉しいことに(!?)18時から2時間レッスンをすることになっていました。
そういうわけなので、荷物だけ部屋に置いて、すぐに彼のスクールへと向かいました。スクールは、ホテルから30分くらい離れた町(名前までは、わかりませんでしたが)の雑居ビルにありました。(2年前に現在のところに移転したので、私には初めての訪問でした。)
ガラスのドアを開けると、テーブルとソファがまず目に入りました。
その先のドアの奥に、30坪ほどのボールルームがありました。2時間のレッスンの後、李さんカップルと数名のスタッフと一緒にスクールの近くの韓国料理(もちろん焼肉です)の店へ行きました。ちょっと前の韓国では、街のあちこちで漢字を見かけたのですが、現在はハングル文字一色になっていました。看板を見ただけでは何の店だか全然わからず、「店を覗き込んではじめてわかる」といった具合です。この日に行ったレストランは(2階に案内されたのですが)、一見日本と同じお座敷の部屋でした。と、いっても畳ではなく、温突(オンドル)部屋になっていました。「温突(オンドル)」というのは韓国特有の暖房方法で、わかり易く言えば「床暖房」です。その上に座布団を敷いて座るのですが、大変心地良く離れがたい暖かさでした。骨付きカルビがメインのディナーでしたが、さすが本場!キムチの種類も豊富で、日本ではあまりお目にかからない「水キムチ(ムルキムチ;薄い塩味のさっぱりとした歯ごたえのあるキムチ)」というのもありました。しかし、何といっても主役はカルビ!!焼いたカルビをサンチュという葉に味噌・キムチ・生のにんにくなどと一緒に包んだものを口いっぱいにほお張るのです!!!これがなんとも結構うまいんですよ!!!そしてビールは韓国産のOBビールを頂き、皆でワイワイガヤガヤ・・・・(ちなみに、李さんは日本語堪能なので通訳してもらい、スムースに打ち解けあえました。)
1日目にしてすっかり韓国の味覚を満喫しました。ディナーの後、李さんにホテルへ送ってもらって日曜日の打ち合わせをし、4年ぶりの韓国訪問第1日目は無事に終わりました。
この日は朝が早かったので、彼と別れてすぐにベットに入りました。
<1月30日(日)>
さあ、今回の最大の楽しみ・競技会の日です。会場はロッテホテル2階の大きな宴会場なので、部屋からタキシードで行けて、大変便利でした。13時から競技開始と前日に聞いていたので、朝食を済ませてから隣のデパートの10階にある免税店へ行き、そこそこ買い物をし、仕度をすませて13時前には2階の会場へと行きました。すでに会場は、出場する選手たちの熱気に溢れていました。そして会場に入ったとたん、4年前との余りの違いに驚かされました。4年前は、レベルもまだ低く、選手も中年以上の方が多くて若い選手を見つけるのに苦労しました。その当時に比べ、若い層がとても増えたことに、まず驚きました。大学生の中にも、日本の学生のように舞研に所属している選手をたくさん見ることが出来ました。又、ジュニアの選手が何組かいたことも印象的でした。技術的にも、4年前とは比べものにならないくらい進歩をしており、特にラテンの基本的な技術の向上に、非常に明るい将来を感じました。そしてドレスも・・・・以前は流行遅れのデザインを着ていましたが、今では流行の先端をいくものを着ています。モダン部門でも、技術の向上がかなり見られ、特に大学生のモダン選手の中にかなり将来有望な選手が育ってくるのではないかと感じました。
韓国は今や、サッカー・柔道・バレーボールなどで日本と互角又はそれ以上のチームになり、次々と選手が育っています。現在のところ、ダンスにおいては“一日の長”がありますが、今後はアジアの中でも非常に強力な存在になるのではないかと感じました。さて、今日行われる競技は、アマチュアのカテゴリーが多く、ノービスモダン・ラテン、ジュニアモダン・ラテン、大学生によるモダン・ラテン、そしてアマチュアモダン・ラテン、プロモダン・ラテンでした。13時から各予選を行ない、17時に終了。18時から日本のスクールでお馴染みのディナー・パーティー形式でのプロ・アマのデモンストレーションを行いました。デモンストレーションの合間にそれぞれの決勝戦をはさむという形で競技会は進行していき、定刻を少し過ぎた22時15分に競技会は無事終わりました。李さん以下役員も皆、疲れているということなので、特に打ち上げはなく、私もその足で部屋へ戻りました。ルームサービスを取り、翌朝10時から8時間のレッスンに備えて23時30分にはベッドに入り、今日の驚きを振りかえる間もなく深い眠りに落ちていました。
<1月31日(月)>
朝食を済ませ、9時15分のロビーでの待ち合わせ5分前に降りてみると・・・・もう李さんは待っていました。車中、昨日の競技会や、パーティーの話などをしていると、あっという間にスクールに到着。そして、10時から18時まで、プロやアマの選手たちへレッスンがビッシリ続きました。全体的には「基本」を中心にレッスンしたのですが、なかなか反応が良く、私のレッスンを大体理解してくれたようでした。李さんが通訳をしてくれたのですが、途中で電話が鳴ったり、お客さんが来たりで、どうしても途中に空き時間ができてしまいました。その間は、日本語も英語も通じないので、身振り手振りのレッスンでした。8時間後の18時には、日本でいつもレッスンしている時の数倍も疲れていました。すべてのレッスンも無事終了。今日のディナーは、李さんの生徒さんご夫婦2組がソウルで一番有名な韓国料理のレストランへ招待してくださることになっていました。そのご夫婦との待ち合わせ場所でもあるレストランへ李さんカップルと私の3人で車で出かけました。しかし、月末・週明けの月曜日とあって、道路はあちこちかなり渋滞しており、約束の時間を15分ばかり遅れて到着しました。レストランの玄関前は、大きな駐車場になっており、玄関に車を寄せると4〜5人の駐車場スタッフが、次から次へと入って来る車の整理をしてくれてました。車を降りると、後はスタッフが駐車場に運んでくれるので、私達はそのまま店内に入りました。入り口のドアの左側に、女子ゴルファーがいろいろなスウィングをしているポストカードが置いてあり、自分の好きなポーズのものを好きなだけ持って行っていいようになっていました。(もちろん、無料!!)私も、ゴルフをするので興味があり、数枚手にしてみました。よ〜く見ると、世界的に有名な女子プロゴルファー、昨年全米女子ゴルフで優勝した韓国のエース“パク・セリ”の写真ではありませんか!!すかさず李さんが「このレストランのオーナーはパク・セリのご両親ですよ。」と教えてくれました。それでこんなに写真を置いてあったという訳でした。レストランの中はかなり広いにもかかわらず、たくさんのテーブルはほぼ満席状態でした。奥のほうには李さんの生徒さんご夫婦が先に到着していて、こちらに手を振って「こっちよ〜!!」合図をしてくれました。この2組のご夫婦は非常にダンス好きの方たちで、
“日本インター”や“スーパージャパンカップ”などの大きな大会を見るために何度か来日していました。その際、何回かお会いしたことがあったので、再会を共に喜びました。そしていよいよディナーの始まりです。このレストランの有名な食べ物は、何といってもカルビでした。大変柔らかなおいしい肉で、炭で焼くのでさらにおいしくなります。韓国料理は、私の好物の一つで、東京でもイベントの打ち上げというと、教室のスタッフたち大勢で教室のそばの焼肉屋へ行きます。食べ慣れてはいるのですが、本場で味わう味付けは格別に美味しく感じました。その他チヂミ(韓国風お好み焼き)、煮た魚などなど色々と頂きました。歓談の中で、ダンスの話の次にゴルフの話で盛り上がりました。(李さんの生徒さんが、かなりの腕前だったせいもあったのですが・・・ちなみに、私はたいしたことはありません)あっというまに「気候もよくなる5月中旬に、ソウルで2日間ゴルフをしましょう」という話しがまとまってしまいました。肝心の李さんはゴルフをしないので、私はゴルフの約束の2〜3日前にソウル入りし、ダンスのレッスンするということになりました。そしてみんなで「5月の再会」を約束し、私は、ごちそうになったお礼を述べ、李さんの車でホテルへ戻りました。
<2月1日(火)>
李さんとホテルで朝食。「将来は、日韓対抗のチームマッチのようなイベントなども共同で開催したい」という李さんの希望を実現させるためにはどうしたらよいのか・・・、両国の選手の親睦や技術の交流について、どのようにしたら成功するかなどなど検討しました。もちろん、両国のダンス界の発展についての話もあり、危うくそのままランチタイムになってしまうところでした。13:35ソウル発JL952便に乗るため、11時に彼の車でホテルを出発しました。「5月の再会の約束」をの別れの挨拶替わりにして、飛行機に乗り込み、無事帰国しました。大変有意義な3泊4日の韓国訪問でした。